医療政策入門~まず押さえるべきポイント~

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こんにちは。

普段は対製薬企業・医師向けのビジネスに携わっている甲です。

今回は、医療業界に携わる人は絶対に関係する、でもちょっととっつきにくい「医療政策」について、SHIP0期生メンバーでもある伴先生・石井先生にお話しいただきました。

日本の医療政策において知らない人はいないであろう重鎮の田中滋先生は、医療問題を考えるうえで、医療を構成する3つのレイヤー「政策」「経営」「現場」全ての理解が必要とおっしゃっています。経歴をご覧いただければわかる通り、お二人はこの全てを経験、精通されているので、皆さんお困り事があればお二人までどうぞ!

医療を取り巻く6大ステークホルダー

 

 医療政策に入る前に、行政はどんな立ち位置にいるのか、医療を取り巻くステークホルダーを整理しました(図1)。 医療政策には、行政⇔メーカー(製薬など)間で重要となる「薬機法」も含まれますが、本イベントでは、主に行政⇔保険者・病院間に関わる話をしていただきました。

 図1

 

社会(医療)保障は国防のため!?

 

 そもそも、何故社会保障が存在するのでしょうか。

「時は19世紀のヨーロッパまで遡る」と石井先生は言います。工業化による労働者化が進み、血縁や地縁の関係から一定程度独立した結果、それまでの血縁や地縁による支え合いの機能は希薄化していきました。その中で戦争をし、負傷した兵士達が困窮する事態になれば、社会情勢は不安定となり革命が起きかねない。実際、ほぼ同時期にパリ・コミューン革命が起きていました。革命を防ぐため、つまり「国防」のために、ドイツの帝国宰相であったビスマルクが社会保険制度を制定したのが、近代の社会保障の始まりだそうです。

 

行政が使える武器は、IncentiveとRegulationの2つ

 

 社会保障の背景を学んだところで、実際の医療政策を見ていきましょう。

「行政が使える武器は2つ。Incentive(報酬)とRegulation(法規)であり、これまではIncentiveを主に行使していた」と伴先生は言います。

Incentiveは診療報酬改定による誘導が良い例でしょう。具体的には、医薬分業・院外処方普及を目的とした処方箋料の点数引き上げや、後発品普及促進のための一般名処方加算や後発医薬品調剤体制加算の導入・引き上げが挙げられます。

Regulationと言うとわかりにくそう…と思いますが、石井先生によると「頑張って読むしかない」そうです。とは言え、法規を読み解く上で押さえるべき重要ポイントはあります。それは、「法規がどんな主従関係なのか」。

憲法>>>法律>政令>省令(施行規則)⇒告示

 通達>通知

上記を踏まえた上で法規を読むと、構造が理解しやすくなるそうです。

 

その二つを策定するのは、保険局と医政局

 

では、具体的に厚労省のどこの部門が、どんなRegulationを作っているのでしょうか。医療保険制度や後期高齢者医療制度等、ファイナンスに係る法規を「保険局」が策定しており、健康保険法や高齢者の医療の確保に関する法律等が挙げられます。

一方、医療提供体制に係る法規は「医政局」が策定し、医療法や医師法等が挙げられます。医療法の元に、省令として「医療計画」があり、その医療計画の元に「5疾病・5事業毎に医療連携体制を構築する事となっています。

 

世界最先端を行く高齢化


 医療計画は、地域の実情を反映した、地域ごとに策定されるものでなくてはなりませんが、何故「地域ごと」なのでしょうか?それは、世界最先端を行く高齢化の進展(図2,3)による費用増大・少子化による労働力低下・経済低迷による現状の保険制度維持の限界と、地域毎にその進展の度合いが大きく異なる(図4,5)ことが背景にあります。

図2 すいません、文字化けが・・・

図3

出典:2010年までは総務省「国勢調査」、

2011年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(2012年1月推計)

http://crebios.jp/service/insurance.html

 

図4:出典 全日本病院協会 https://www.ajha.or.jp/guide/28.html

図5:各二次医療圏の医療需要のピークの時期
出典:社会保障制度国民会議 資料 (平成25年4月19日 第9回 資料 3-3 国際医療福祉大学 高橋教授 提出資料)

 

医療提供体制は「質」「コスト」「アクセス」の3要素からなりますが、医療政策において、これらはトレードオフの関係であり、基本的には2つしか取れないと言われています。質もコストも捨てられないため、“アクセス”の見直しが、地域包括ケアシステムと地域医療構想に繋がっているのです。

そもそも日本は病院が乱立しており、フリーアクセスも手伝って、軽症であっても大病院へかかる患者がいて非効率な状態です。実際は、人口が1,000いたら入院になる割合は9人程度です(図6)。医療の発展も相まって、今求められるのは、病院にかかるような「非日常の医療」ではなく、生活習慣病治療を始めとした「日常の医療」。生命予後延長からQOLへ視点へと移り変わっているのです。

このイベントレポートが、今、何故「地域包括ケア」が叫ばれる背景の理解に役立ったら幸いです!

図6:1,000人あたりの医療需要

 

筆者の感想:少しでも医療政策を身近にするために

 ちょっととっつきにくい医療政策。法規が分かりにくいこと以外に、厚労省の収集・発表しているデータが探しにくいことも理由の1つだろうと感じています。
きっとビジネスに活かせる資料もゴロゴロ眠っているはずなのに、いかんせん辿り着かない…!(厚労省さん勿体ない…!)

そう思っていたら、講演最後に石井さんが国のオープンデータまとめ(図7)をシェアしてくださいました!また、「Tableau 石川ベンジャミン」で検索すると、DPC情報や人口動態等の色んな情報がグラフで確認出来るそうです。お宝情報! 早速私も使ってみようと思います。

図7