モリモンGO!って結局、何のイベントだった?

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「モリモンゴーやーん」

僕、守本陽一はこう言われて、ひたすらいじられ続けた。開催までの1カ月間、いや終わってからも言われたから、2カ月、3カ月とその現象は続いている。「モリモンゴーやーん」といじってきた人たちの半分以上が続けてこう言った。「結局、モリモンゴーって何のイベントなの?」

モリモンGO!は、僕も所属するSHIPが開催したイベントの1つだ。僕は名字の守本をもじって「もりもん」と呼ばれている。それを踏まえたモリモンGOという抜群のネーミングセンスと、イベント告知のために作られた画像からは、面白さが滲み出ている。じゃあ何のイベントをするんだろうと、イベントページを見ると、こう書かれている。

今回のゲストは、多動医学生オブザイヤー(SHIP認定)を受賞した守本陽一(モリモン)君です。自治医大卒のモリモンはこの先地元の兵庫県の地域医療に従事していくため、東京でゆっくり話が聞ける内に聞いてしまおうという企画です。

これだけだ。結局、何のイベントなのか分からない方が当然といえば当然だ。さらに、補足説明文には、こうある。

ぜひモンスターボール持参の上、お越しください笑

謎が少しは解けるかと思いきや、もう謎しかない。どういう話をするの?という問いではなく、何のイベントなの?と聞いてくる人が多いのもうなづける。一体、モリモンGO!とは何のイベントだったのだろう。今回は、登壇した僕自身がこの場で振り返りつつ、解明していきたいと思う。

 

もりもんが携わってきた「モバイル屋台DE健康カフェ」とは

モリモンGO!の5日前、僕は僕は所属していたHEISEI KEIGO LEADERSという介護系コミュニティーのイベントに登壇していた。そのときのタイトルはこうだ。

 

“移動式屋台”で地域と医療をつなぐ! 医学生 守本陽一が学生最後の本気のプレゼン
– KAIGO MY PROJECT体験イベントvol.53 –

 

僕が医学生時代にやっていた「地域診断」と「モバイル屋台DE健康カフェ」という活動から、地域と医療の関係性、そして医療の役割を考えていくイベントだった。

まず、モバイル屋台DE健康カフェの活動を簡単に説明すると、「医療者が地域で移動式屋台を引き歩き、コーヒーを振る舞う活動」だ。考えたのは、東京大学大学院医学教育国際研究センターの密山要用先生。最初は、地域のつながりなどのソーシャルキャピタル(社会関係資本)を見つけるべく、地域に出ていくのが目的だったと密山先生は言っていた。その活動に僕も参加する中で、屋台はより多くの役割を持っていることに気づいた。

まず、地域と医療をつなげる手段としてはとても良い方法だ。近年、いつでも医療に関する相談ができる「暮らしの保健室」など、街中で医療や健康の情報に触れる機会が増えているが、「場所を構えて来る人を待つ」という形式に変わりはない。だから、健康や医療に関心がない人がそこを訪れることはない。

一方モバイル屋台DE健康カフェでは、医療者は医療者であることを前面に出さず、コーヒーの提供を通したカジュアルな対話を行う。そのため医療や健康にさほど興味がない住民にも自然にリーチできる。これは、コーヒーや屋台といった「面白そう」「美味しそう」「楽しそう」という人の感性に訴えかける活動だからかもしれない。

次に、医師と患者の関係性をフラットにする役割を持つ。通常、外来に入ってきた時点で医師と患者の間には情報の非対称性があり、医師の方が何となく立場が上のように感じられてしまう。それは他の医療者でも同じだったりする。

しかし、モバイル屋台DE健康カフェではそうはいかない。医療者は、医療者であることを積極的に明かさないため、ただのコーヒーを配る人でしかないからだ。会話を進める中で、普段はどんなお仕事をしているんですか?と聞かれて医療者ですと答えたときには、距離はかなり縮まっている。「医療者なのにコーヒーを配り歩いているなんて、変わってるねー」なんて言われて、もはや医療者だからといって距離を取られなくなっている。フラットな関係を築いてから行う医療相談、健康相談では、より本音に迫ることができ、住民の本質的な健康につながっていく。

最後に、人をつなげるきっかけになるということ。堅苦しい医療教室には行かなかった人も、屋台なら面白そうだと近づいてきたりする。これが面白いところだ。人と人をつなげ、医療者と非医療者の境界をなくしていく。身近なところに医療者がいる。モバイル屋台DE健康カフェはそういった活動だ。イベントで、僕はこう締めくくった。

これからの医療は、医療や健康に興味のない人にどうやって健康になってもらうかを考えないといけない。そのためにはモバイル屋台DE健康カフェのような医療の色を出さずに、「面白そう」「楽しそう」「美味しそう」といった五感に訴えかけるコンテンツを作っていく必要がある。そうなると、医療の役割はもっと広がるはず。

イベントで話した後は、屋台の活動に興味を持ってくれる人が多かったし、僕がこれからすることに関心を持ってくれる人もいた。目の前の患者を救うことももちろんむちゃくちゃ大切だけど、もっと上流で予防や健康を考えるような人がたくさん増えていっていることが本当に嬉しい。これから全国各地で屋台が増えていくかもしれない。

 

学生はスーパーマリオのスター状態

僕は今、学生時代から活動拠点であった兵庫県豊岡市にこの4月から移り、初期研修医として働いている。僕は学生時代、本当にいろんなことを経験させてもらってきた。

但馬ゆかりの医療系学生の集いの代表、とよおか地域診断サミット主宰、HEISEI KAIGO LEADERS運営スタッフ・マイプロファシリテーター、SHIP運営スタッフ、よんなな医学会スタッフ、Newspicks医療・介護のリアルおすすめピッカー、変人会主催、日本集団災害医学会学生部会代表などなど、挙げればキリがない。

なぜ僕がこんなにいろんなことをやらせてもらったのか。僕がむちゃくちゃ優秀だったとか、人に好かれやすいとか、リーダー気質とかそんなことは1ミリもない。むしろ失敗も多かったし、人に好かれるタイプの人がうらやましかったし、もっとリーダーに向いている人はたくさんいることも知っている。もっと上手く物事が運べればなと思ったことは数えきれない。それでも僕に多くを任せてもらえたし、それで色々やりたいことをやれたし、たくさんの経験をさせてもらえた理由は一つしかないと思っている。

一番大きな理由は多分、「学生だったこと」だ。学生だからこそ、みんな手伝ってくれたし、無茶を言っても許してくれた。よんなな会を主催している総務省の脇雅昭さんが言っていた言葉が本当にしっくりきている。

今の学生さんには、「お前らマリオでいうところのスター状態なんだぞ」と言いたい。誰でもなんでも攻略できちゃう。「学生です」と言ったらみんな話を聞いてくれるし、会ってくれるんだから。社会に出て「何々会社の何々さん」となったらその瞬間、人はそういう目で見てきますよ。学生は、いろんな色であって、何色でもないんです。そういう時にいろんな人に会ったら、自分のできることに気づくんじゃないかな。活躍している人とつながれば、最前線のことが分かります。頭で考えていても、答えは絶対出てこない。いろんな人と会って話してみるのがいいと思います。

僕はこの「スター状態」でいろんな人に会わせてもらったし、学んで吸収させてもらって、少しだけ実践できたと思っている。僕は4月から学生という肩書きが外れる。医師として、より社会からシビアに見られるからこそ、自分自身のやりたいこと、社会問題の本質的な部分に取り組んでいかねばと身を引き締めている。実績や信頼を少しずつ積み上げていきたい。

でも…この記事を見てる学生の皆さんには、まだ時間があるよ! キーワードは「が・く・せ・い」! 学生さん、今がチャンス!! いっぱいやりたいことやるといいと思うよ!

 

で、モリモンGOって何ですか

ここまで読んでいただいた方の中には、かなり本題とずれてきたとお思いの方も多いと思う。だってまだモリモンゴーの話を1ミリもしてないから。すみません。そろそろ本題に入ります。ずばり、モリモンGO!とはなんだったのか。

ここまで、医学生時代の僕がやっていたことやスペック、考えを話してきた。僕たちSHIPでは、これを「ロジ」と呼んでいる。ロジとは、機能タグのことで、できること、やってきたことなど、能力や実績のことを指す。機能タグは確かに大切だ。「これができるからあの仕事をやってもらおう」「あの仕事をやった実績があるからお願いしてみよう」と仕事につながる。

でも、機能タグだけで見られていると、辛くなることがある。「僕から医師であることを除いたら、誰が周りにいてくれるんだろう」という不安はまさにそうだと思う。医師である、医業を行えるという機能タグが病気や事故でできなくなったとき、誰が一個人として自分を見てくれるんだろうと思ってしまう。

その不安を解消できるのが、「エモ」と呼ばれる人格タグだ。SHIPでは自己紹介のとき、ロジよりエモを重視する。好みや趣味、人柄、価値観など人格に焦点を当てて人を見る。たとえその人の実績がなくても、同じものが「好き」というだけで一気に距離近まる。人格タグは、アイドル好きなんてゆるい「好き」から、社会課題の本質が見えているという価値観まで、様々。そういう価値観を共有する集まりはその人の考えや好きが変化していっても、きっとずっと続いていく。

SHIPのイベントで講演にお越しいただくゲストは、どの方も素晴らしい実績を持っている。でも、その裏には、辛い経験があったり、偏愛があったり、大切な人を想っての行動だったりといったドラマがある。そんなゲストの「エモ」にも必ず焦点を当てる時間を作るのが、SHIPのイベントだ。

ゲストが生まれてから死ぬまで。どこで生まれて、何が好きな子どもだったのか、いつその道に進もうと思ったのか、趣味は何なのか。その人自身を深掘りする。その人を深掘りすることでなぜ今のことをやろうと思ったのかが見えてくるし、話を聞く側もゲストの経験を自分の人生に当てはめ、これからの道が見えてくる。この人にフォーカスを当てる形は、僕がスタッフを務めていたHEISEI KAIGO LEADERSのMY PROJECTに近い。

モリモンGO!は、卒業にあたり、僕の「ロジ」ではなく「エモ」にだけ焦点を当てたイベントだった。だから、最初のスライドは僕の趣味に関する9つの話だったし、その後は僕の生い立ちを話した。結果、19時半から始まって、終わったのは終電間際の23時半を回ったところだった。みんな僕の「エモ」にフォーカスを当てた話を温かく聞いてくれたし、合いの手を挟みながら言いたいことをうまく抽象化してくれる仲間がいた。本当にSHIPらしい、素敵なイベントだった。

 

居場所を作ろう

 SHIPではゲストに、Take Home messageを書いてもらっている。僕も今回「書いてね!」ってスタッフのみんなに言われたとき、本当に悩んだ。モバイル屋台DE健康カフェを踏まえると、「みんなで地域に出よう」だし、これまでの学生時代を踏まえると、「学生である特権を生かそう」だ。でも、これはロジ面でのメッセージだと僕は思った。

僕は「エモ」でつながったコミュニティーに救われた。医学部6年生の一番大事な時期に母を亡くし、呆然と立ち尽くしていたときに僕を救ってくれたのは、SHIPや友達、家族のコミュニティーだった。その経験を踏まえると、僕に書けることは一つしかなかった。

「居場所を作ろう」

自分のエモ面を受け入れてくれる居場所があれば、人は頑張れる。ありのままで入れる。生きづらさなんてなくなっていく。そう僕は思っている。誰もが自分にとって生きやすいコミュニティーを持てる社会にすること。それもある意味、医療の役割なんじゃないか。僕はそういう医者になっていく。人にフォーカスできる医師になりたい。モリモンGO!だけじゃない、みんなの〇〇ゴーを次はやりたい。(守本陽一)