子どもの孤独にどう向き合うか

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11月20日、代官山にてSHIPイベント「子どもの孤独にどう向き合うか」を開催しました。今回のイベントは、SHIPメンバーで産婦人科医のかいちゃんの提案で企画されたもの。いじめや虐待など幼少期のつらい体験によって「死にたい」「誰も信じられない」と感じる子どもたち。普段は「困った子」として認識されている子も、背景にはこうした事情があったりします。こうした子どもたちとどう向き合い、どう接すれば、生きづらさを減らせるのでしょうか。または、せめてさらに傷つけることなく接するには、どうすればいいのでしょうか。

ソフトドリンクやホットコーヒーの他、スペシャルドリンクとして、気持ちが晴れるイメージで、爽やかなレモネードと、タピオカミルクティーが用意されました(タピオカミルクティーって何か楽しい気持ちになりませんか…?)。

ゲストは、どんな子どもも尊厳を持って生きられる豊かな社会を目指し、子ども達が孤立しない仕組みを作る活動を行っているNPO法人PIECES代表で児童精神科医の小澤いぶきさんと、国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センターで精神保健研究所 薬物依存研究部 部長子どもたちの自傷・自殺対策に取り組む精神科医の松本俊彦さんです。

最初に問題提起としてお話いただいたのは、松本先生です。松本先生は、医師として薬物依存対策に取り組み中で、問題の根源にある「孤立」とも向き合うことになったと言います。

若者が最初に薬物に手を出す主なきっかけは4つ。そのうち3つは、どうしても仲間でいたくて、薬物にも手を出してしまう、価値のある自分でなければ存在する価値がない、価値ある自分でいるために、薬物を使ってまで保とうとする、自分の不安や悩みをリアルの知り合いに相談できず、密かに解消しようと薬物を使う――と、「孤立」に関係しているのです。

さらに、「人を依存症にするのも『孤立』である」と松本先生は続けます。1970年代にサイモン・フレーザー大学のブルース・アレグサンダー博士らが行った「ネズミの楽園」という有名な研究で、「孤立」が薬物の依存症の原因になることが示唆されました。

日本で有名な薬物対策のフレーズに「ダメ、ゼッタイ。」というものがあります。これは、薬物依存症の恐ろしさを前面に押し出し、「絶対に手を出してはいけない」と警鐘を鳴らす意図がありますが、このように「一度手を出したら終わり」といった恐怖訴求では、薬物の問題で今現在困っている人、やめられずに悩んでいる人、周囲に薬物依存者がいる人を傷つけ、孤立させる悪循環を生む可能性があります。松本先生も、「スティグマ(差別)による抑止では、本当に届けたい人に届かない」と批判しています。

では、こうした「孤立」をどう埋めていけばよいのでしょうか。

次に登壇した小澤いぶき先生は、児童精神科医として「問題行動」のある子どもたちと向き合ってきました。しかし、この問題行動は、虐待などストレスをきっかけに心の傷を負った子どもが、不器用に自分の内面を表出した結果であることがあるそう。この行動を「問題行動」とされることで、こうした子どもたちはさらに行き場を失って孤立してしまうのだそうです。

シビアなテーマながら穏やかな雰囲気で進むイベント

「人に頼る」ということは、とても主体的で難しい行為。そこで、小澤先生はNPO法人の活動を通して、子どもたちが(1)自分の現況を問題だと認識できるようになること(2)相談したい相手が思い浮かぶようになること(3)実際に相談しにいくこと――というステップを踏めるようにしたいと考えています。

そこで、小澤先生は、「お互いの背景への想像力を働かせ、頼り頼られる人間関係、『優しい間』をつくりたいと思っている」と話します。

「ここにいても否定はされないっていう感覚を持ってもらうことがまず大切」と小澤先生は言います。ただ、「いるだけで良いんだよ」と言ったからといって、子どもがその通りに受け取って「ただ、いる」というのはなかなかつらいことがよくあります。確かに、私も「いるだけでいいから」と言われたからといって、言葉通り「そうか」と思ってただ座っているというのはなかなか難しいですね。何か役割があったりする方がいやすいです。そこで小澤先生は、物作りやスポーツ、ゲームなど、個人の興味に合った「もの」を囲んだり間に挟んだりして、「いる」ことを許容しやすくしているそう。プログラミングが得意な子どもには、「(こんなにプログラミング知らないなんて)本当に大人なの?」と言われたこともあると笑っていました。子ども達が孤立しない仕組みを作るNPO法人PIECESの活動については、こちらのウェブサイトをご覧ください。

平日夜にもかかわらず、50人以上の方にお越しいただき、皆さんの雰囲気もあって穏やかな時間となりました。twitterで「#東新宿SHIP」と検索いただくと、このイベントにお越しいただいた方たちのつぶやきレポートも見られますので、ご興味あればのぞいてみてください。

SHIP(Shinjuku Healthcare Incubation Park)